キノコ キノコラリー 活動報告

初夏、青山、キノコの胞子が舞う。―はじめての学会発表と「キノコラリー」の物語

JASAG 2026年度春期全国大会でのキノコ初のポスター発表の物語です。

日本シミュレーション&ゲーミング学会2026年度春期全国大会 | NPO法人 JASAG __ jasag.org

活動の記録を、単なる数字や事実の羅列ではなく、一つの「ストーリー」として紡ぐこと。それは、私たちマッシュ&ルームが掲げる「第3の活動」の真価を伝えるために、最も大切なプロセスです。専門的な知見に「誰かの体温」を宿らせることで、技術は冷たい道具から、心を動かす「魔法」へと姿を変えるからです。物語として発信することで、私たちのビジョンは風に舞う胞子のように、思いもよらない場所へと届き、新たな笑顔を咲かせていきます。

2026年5月31日。渋谷の賑わいを背に表参道を歩くと、そこには眩いばかりの初夏の光に包まれた青山学院大学・青山キャンパスが広がっていました。凛としたアカデミックな静寂のなか、若葉が陽を弾く様子は、まるでキャンパスの木陰で静かに、けれど力強く育つアイデアの芽吹きのよう。

普段はIT企業のエンジニアとしてコードを綴る私が、今日は香川大学の客員研究員として、そして「キノコ」という看板を背負った表現者として、17号館の入り口に立っています。会場の看板を見上げた瞬間の、胸がキュッとなるような緊張感と、それ以上の高揚感。まるで新しい冒険のステージに足を踏み入れた勇者のような気分で、私は会場へと向かいました。

はじめに:一歩踏み出した、エンジニア・キノコの冒険

「学会で発表する」。それは私にとって、日常という地面の下で伸ばしてきた菌糸が、ついに地上へと「キノコ」を突き出したような、大きな転換点でした。5月の爽やかな風に背中を押されながら、私は人生初となるポスター発表の舞台に挑みました。

本業のエンジニアという枠を超えた「第3の活動」としての挑戦。それは単なる自己研鑽ではありません。高度なICTという魔法を、いかにして「教育」や「社会」という現場の土壌に馴染ませ、ポジティブな波紋を広げていけるか。大人の踏み出すこの小さな一歩が、子どもたちの未来を百歩進める力になると信じて、私はこの場に立っています。

会場内には、多くの研究者たちの熱気が満ちていました。専門的な議論が飛び交う厳かな空間。そこにマッシュ&ルームの「ワクワク」を持ち込むことは、一見すると少し風変わりな挑戦だったかもしれません。しかし、遊び心こそが、硬直した課題を突き破る力になる。緊張で少し冷たくなった指先でポスターを広げながら、私はこれから始まる専門家たちとの「対話」という冒険の準備を整えました。

冒険の地図を広げて:特別支援教育×ICTが描く「キノコラリー」の魔法

今回お話ししたのは、知的障害や発達障害のある子どもたちのための防災学習支援システム「キノコラリー」の物語です。「特別支援教育」という、一人ひとりの特性に深く寄り添う繊細な領域において、ICTは決して冷たい「壁」ではありません。むしろ、子どもたちの日常と学びを繋ぎ、困難をワクワクする冒険へと変える「架け橋」になれるのです。

この「キノコラリー」には、子どもたちの主体性を引き出す4つの魔法が込められています。

  • 冒険の鍵: 校内の消火器や避難所案内板にそっと貼られたQRコード。これらは見慣れたはずの校内を、一瞬にして宝探しのフィールドに変える「冒険の鍵」です。

  • 魔法の鏡: タブレット端末は、自分なりの答えを映し出す鏡。文字が読めなくても、写真を撮ったり、身体を使って表現したりすることで、自分だけの方法で世界と対話できます。

  • 冒険の相棒: 子どもたちが自分で描いたキノコのキャラクターが、画面の中で「冒険の相棒」として登場します。「与えられた課題」ではなく「自分たちの物語」にする共創の仕組みが、子どもたちの瞳に真剣な光を宿します。

  • 何度でもやり直せる宿屋: 失敗を恐れる必要はありません。間違えても「ゆっくり休んでね、ここは宿屋よ」という温かなメッセージが迎えてくれます。何度でも挑戦できる、宿屋のような安心感が、子どもたちの「もう一回!」を引き出すのです。

技術の裏側を語るはずが、気づけば私は、子どもたちの笑顔を守るための「魔法のレシピ」を熱く語っていました。

現場で生まれた「ワクワク」の連鎖:エリンギ先生としいたけ博士との対話

セッションが始まると、私のポスターの前には次々と探究心旺盛な方々が集まってくれました。

あるベテランの先生(仮にエリンギ先生とお呼びしましょう)は、埼玉県立上尾かしの木特別支援学校での「延べ191名参加」という実績に目を見開いてくださいました。「予想以上に児童が夢中になっていた」という現場の声をお伝えすると、エリンギ先生も「これこそが今の教育現場に必要な『遊び』の力だ」と深く頷いてくださいました。

一方、分析的な視点を持つ「しいたけ博士」からは、データに関する鋭いご指摘をいただきました。「避難所マークの理解率が41%に留まった点について、どう考えますか?」という問いです。記号という抽象的な概念を、どうすれば日常の身体感覚と結びつけられるか。この41%という数字は、失敗の証ではなく、次なる魔法を開発するための、宝の地図のようなヒントなのです。

「先生と子どもが、一緒にクイズを作り上げている姿が見えるようです」。そんな言葉をいただいたとき、この活動が単なるツール提供を超えて、人と人との新しい「共創」の関係を紡ぎ始めていることを確信し、胸が熱くなりました。

考察と展望:一億総キノコ化計画への、確かな手応え

今回の発表で得られた最大の洞察は、「教える側・教えられる側」という固定された壁を、ICTが溶かしていく可能性です。

先生が環境を整え、子どもが相棒(キャラ)を作り、共に校内を探検する。この「共創」のプロセスが、日常の風景を「防災の学び舎」へと書き換えていきます。エンジニアとして、社会のOSを「ちょっとだけワクワクするもの」にアップデートする。そんな手応えを、青山の地で確かに感じることができました。

今後はこの知見を学校の中に留めず、地域全体を巻き込んだ「一億総キノコ化計画」へと繋げていきたいと考えています。地面の下で菌糸が粘り強くネットワークを広げるように、まずは先生をエンパワーし、次に子どもたちを、そして最後には地域全体をワクワクの連鎖に巻き込んでいく。誰もがICTを味方につけて、自分らしく輝ける社会を目指すロードマップが、私の頭の中に鮮明に描き出されています。

おわりに:感謝を込めて、次なる冒険へ

この「キノコラリー」という冒険は、私一人では決して成し遂げられなかった物語です。多大なるご協力をいただいた上尾かしの木特別支援学校の皆様、そして共に研究の道を歩んでくださる後藤田先生に、心より感謝を捧げます。

本業とは異なる「第3の活動」だからこそ見える、澄み渡った景色の美しさがあります。エンジニアとしてコードを書く手、研究者として思考を巡らせる頭、そしてキノコ・エバンジェリストとして笑顔を届ける心。これらが重なり合ったとき、世界は少しだけ優しくなるのだと感じています。

もし、あなたの心にも小さな「ワクワクの種」があるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。その一歩が、いつか誰かのための大きな木陰(キノコ)になるかもしれません。

ちょっとのITとICTでちょっとの笑顔とワクワクをこれからもお届けします。

ご一緒しませんか?

マッシュ&ルーム 創造せよ!頭にキノコが生えるまで マッシュ&ルーム(通称キノコ) 主に品川区を中⼼に活動する任意団体。仕事や会社の枠にとらわれず、⼦供たちの笑顔のため、お年 mashandroom.org

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