キノコラリー 活動報告

コーヒーの香りは、デジタルで加速する。横浜で起きた「キノコラリー」という小さな奇跡の物語

2026年6月27日。梅雨の晴れ間に差し込む日差しが、少しだけ夏の訪れを予感させる土曜日。横浜平和プラザホテルの「BricksStudio」は、いつになく熱い熱気と、アジア各国のコーヒーが放つ多層的な香りに包まれていました。

入り口をくぐると、そこには2オンス(約30〜45ml)の小さなカップを片手に、まるで宝探しを楽しむ子供のような表情を浮かべた人たちが溢れています。ベトナム、タイ、パプアニューギニア……次々とカップを重ね、産地のストーリーに耳を傾けるライブ感。「"tsunagu" COFFEE MARCHE」の会場には、一杯のコーヒーを媒介に「ヒト・モノ・コト」が鮮やかに溶け合う時間が流れていました。

そんな温かなアナログの体験のなかに、私、ICTエンジニアの「キノコ」が魔法をかけにやってきました。目的は、デジタルという少し無機質な技術を使って、このコーヒーの旅をもっとワクワクするものに変えること。私たちはICTを、人と人を隔てる壁ではなく、繋ぐための「魔法の道具」として会場に持ち込んだのです。

1. アジアを旅するRPG「キノコラリー」の仕掛け

私たちが用意したのは、ブラウザで手軽に参加できる体験型ゲーミフィケーション「キノコラリー」です。会場全体を一冊の物語、あるいは広大なRPGの世界に見立てました。

参加者はまず、自分の分身となるキャラクターを選びます。王道を行く「勇者キノコ」だけでなく、「キノコ商人」や、あえて「ただのおじさん」として旅を始めることもできます。そして、スマホを片手に会場内のQRコードを探索し、ミッションに挑んでいくのです。

  • 産地周遊ミッション: アジア8か国(ベトナム、タイ、パプアニューギニア、東ティモール、ネパール、インド、インドネシア、台湾)に加え、和紅茶やフードブースを巡り、それぞれの国にちなんだクイズに挑戦。正解すれば経験値とメダルが手に入ります。

  • 隠し豆の呪文: 会場の片隅に佇む「ふるびたほこら」。そこに記された石碑に、秘密のキーワード「コーヒー」を入力すると、「祠が光り輝いた! 隠された5つの豆ミッションが解放されたぞ!」という演出とともに、新たな冒険の扉が開く仕掛けを施しました。

  • コミカルなRPG体験: 冒険には休息も必要です。キーワード「なめこ」を入力して宿屋に泊まると、王様から「いつまで寝ておる! ゆくのじゃ!」と怒鳴られる一幕も。こうしたクスッと笑える演出が、デジタル上の体験をより人間味のあるものに変えていきました。

2. 数字が語る、圧倒的な「没入感」と現場の熱狂

イベント中、会場のあちこちで「あ、レベルが上がった!」「魔王が出てきた!」という歓声が上がりました。その熱量は、終了後に集計したデータが何よりも雄弁に物語っています。

参加者53名 に対し、記録された総活動数はなんと646回 。一人あたり平均12.4回 もシステムに触れてくださった計算になります。一度の入場時間のなかで、これほどまでにスマホを片手にブースを駆け巡り、コーヒーの物語を能動的に追い求めてくれた事実に、エンジニアとして深い衝撃を受けました。

  • 驚異の完遂力: 全体クリア率は86% 。獲得された金メダルは241個 にのぼり、参加者の皆さんの「すべてのコーヒーを味わい尽くしたい」という情熱が可視化されました。

  • 飲み比べの促進: スポット別のメダル数では、パプアニューギニア(32枚)、東ティモール(31枚)などが上位を占め、ICTが「次の一杯」への行動を力強く後押ししたことが分かります。

  • 遊び心の選択: キャラクター選択では、「勇者キノコ(56.6%)」が人気を集める一方で、15.1%の方が「ただのおじさん」を選びました。「あえて勇者を選ばない」というひねった遊び心が、会場での会話を弾ませる絶妙なスパイスとなっていました。

そして、この険しい旅路の末、強大な魔王「シロヒメセージ」や「グリム・マイコ」を討伐した3人の猛者たち——「こんの」さん、「やまびこ」さん、「MAMEya」さん 。彼らの勇姿は、キノコラリーの歴史に深く刻まれることでしょう。

3. ICTエンジニアが見た「データの体温」と今後の展望

私は常々、「ICTは技術者の自己満足であってはならない」と考えています。今回の活動で最も心に響いたのは、最後の「好きな産地に投票」ミッションの結果でした。

ベトナム、東ティモール、インドネシアが20%で同率1位 。この「嗜好が分散した」というデータは、一見すると勝者がいないように見えますが、実はそうではありません。これは、会場にいたすべてのインポーターとロースターの皆さんが、それぞれのカップに込めた「情熱」が、参加者一人ひとりの心に等しく、深く届いたという証なのです。データが、目に見えない「想いの温度」を可視化した瞬間でした。

私たちは「大人の一歩を子どもたちの百歩に」という想いを掲げています。大人がICTという魔法を使って全力で遊び、新しい繋がりを作る。その背中を見せることが、次の世代の可能性を広げると信じているからです。誰もがキノコのように、自分らしく技術を使いこなし、ワクワクを振りまく「一億総キノコ」の世界。そんな、技術がもっと優しく、もっと自由な場所を目指していきたい。今回の横浜での一日は、その確かな一歩となりました。

4. おわりに:繋がりは、次の一杯へ

この素晴らしい場を創り上げてくださった、ツナグコーヒーマルシェ実行委員会の皆様、そして一杯に魂を込めたインポーター、ロースターの皆様に、心からの敬意を表します。

イベント終了後、データを見ながら「3カ国同票1位ですね(笑)」と顔を見合わせ、苦笑いしながらも多様な個性が認められたことへの確かな手応えを感じた瞬間は、私にとって忘れられない思い出です。

この日生まれた繋がりは、イベントが終わっても消えることはありません。ICTが拡張した物語は、きっと次の一杯、そして次の一歩へと続いていくはずです。

ちょっとのITとICTでちょっとの笑顔とワクワクをこれからもお届けします。

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